@misc{oai:suac.repo.nii.ac.jp:00001475, author = {青木, かな子}, month = {2018-03-31, 2018-04-09}, note = {2017, PDF, 本研究の大きな目的は、全国各地で増えてきた「音楽のまち」の実態を明らかにすることである。「音楽のまち」とは、音楽を活用して地域を活性化させる、まちづくりの取り組みであるが、共通する定義がある訳でもなく、権威ある文化機関が認定する訳でもない。各自治体がそれぞれ独自に進めてきたものにすぎない。 そこで第一の目的は、いったい2017年度の日本で、どのぐらいの自治体が「音楽のまち」と標榜しているのか、この実態調査を行う。結論を先にいうと、筆者の全国調査では、2017年12月現在、北海道から沖縄まで70を超える自治体が「音楽のまち」を掲げていることが判明した。音楽による地域振興は今日の自治体のまちづくりにおける取り組みとしても無視のできないものとなっている。 第二の目的は、自治体の実態を浮き彫りにすることである。「音楽のまち」の実施主体となり得る「行政」「財団」「市民(市民音楽団体や音楽教育機関等を含む)」の視点から、体制のありよう、公立文化施設の運営状況、文化事業の活動内容を説明し、自治体文化政策としての「音楽のまち」づくりを考察する。 分析枠組みは、自治体文化政策研究の第一人者である中川幾郎(初代日本文化政策学会会長)が2001年に著した『分権時代の自治体文化政策 ハコモノづくりから総合政策評価に向けて』(勁草書房、2001)に盛り込まれた中川モデルを用いる。「都市アイデンティティの形成には、市民、行政、専門家の相互参画のシステムのもとに決定されるべきである」と述べていることから、本研究では、「専門家」の集団として市文化振興財団を想定。「行政・財団・市民」の3つに焦点をあてる。互いの連携にも注目する。 第三の目的は、「音楽のまち」の課題と将来像を明らかにすることである。自治体がどんな課題を抱えているかを踏まえ、行政と市民との連携状況、経済界など地域社会とのかかわりを詳述する。 具体的な調査対象として神奈川県川崎市を選定する。同市は2004年から「音楽のまち・かわさき」を掲げてきた先駆的な自治体である。1997席の本格的音楽専用ホール「ミューザ川崎」を建設し、東京からプロオーケストラ・東京交響楽団の本拠地を誘致するなど、同市は積極的な文化政策に取り組んできた。また同市が出資する市文化振興財団は、同ホールを運営しつつ、多彩な音楽事業を繰り広げている。市内では新興住宅地の麻生区等を中心に他市よりも数多いアマチュア音楽団体が活動するなど民間の動きも盛んである。 川崎市を調査対象とする本研究だが、川崎市の発展のためだけではなく、全国の各都市にも何らかの形で貢献できればと考え、課題を浮き彫りにしたい。このためには、全国で初めて「音楽のまち」を名乗った浜松市を比較の対象に選ぶ。浜松市はユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の創造都市ネットワークに「音楽分野」の都市として日本で初めて登録された。川崎市を見つめる「映し鏡」として用いれば、川崎市の現状と課題を浮き彫りにできると考えた。 本研究で明らかにできたことは主に3つある。1つに、「行政」「財団」「市民」それぞれの役割を担い「音楽のまち」づくりと取り組んできたことは十分に評価できる。 2つには、川崎市内には音楽に関する多くの文化資源があり、全市的な組織である「音楽のまち・かわさき」推進協議会を設立して包括的に活動している点も評価できる。たとえば音楽専用ホールであるミューザ川崎シンフォニーホール、フランチャイズオーケストラの東京交響楽団、2つの私立音楽大学、数多くのアマチュア音楽団体などの文化資源である。これらの文化資源は他市を圧倒している。 3つには、川崎市の市内7区ごとに「音楽のまち」の実行委員会が設けられ、区としての文化活動が盛んであった。特に麻生区は市が「音楽のまち」を標榜する前から、音楽のまちづくりを志向していた。この点は注目される。 以上のことから、「音楽のまち・かわさき」の課題が浮かび上がる。 1つには、市中心部に立地する大きな音楽専用ホールで大規模な音楽事業を行うだけでなく、各区で繰り広げられている市民レベルの小さな文化事業に対する丁寧な支援こそが、「音楽のまち」に対する全市的な盛り上がりを促進する。文化事業に関わった市民たち自身も、「音楽のまち・かわさき」の好感イメージを共有することになる。このため区ごとの活動を充実するべきなのではないだろうか。 2つには、そのためにも、行政・財団・市民の連携を強めることが「音楽のまち」をいっそう充実させるために欠かせない。市文化財団は中川モデルでいうところの「専門家」集団であるので、いっそう専門性を高め、ミューザ川崎シンフォニーホールなどで展開する事業をより良質化することに務めなければならない。一方で、官民を包括するために設立された「音楽のまち・かわさき」推進協議会に要望がある。行政と市民の間の「つなぎ手」としての使命を有しているだけに、より重責を果たすことが求められる。広報誌を刊行するなど、音楽資源の情報を集めて広める役割は果たしているものの、音楽家と市民、地域社会を結びつめるなどの面では不十分なところがみられた。, 修士(文化政策), 静岡文化芸術大学}, title = {「音楽のまち・かわさき」の現状と課題:行政・財団・市民}, year = {} }